使ってみたい英語表現 第9集

私は、この数年、北本市の国際化を進めたいと考えて、手始めに、親日国として有名なマレーシアへの訪問を繰り返している。
マレーシアを含むASEAN諸国は、国際語としての英語教育に、日本以上に力を入れている。シンガポールが突出しているが、マレーシアも水準が高い。
そこで、私としても、自分の英語力に磨きをかけるべきだと考え、勉強を続けている。
この間の教材として、NHKの英語教育プログラムを活用している。
そうした勉強の中で、実際に使えれば「カッコいい」と思える英語表現をピックアップすることにした。
若い方々に参考にしていただければ幸いである。
なお、私が勉強に活用し、ここに引用した英語表現は以下のNHK教材である。
*おとなの基礎英語・おもてなしの基礎英語・入門ビジネス英語・実践ビジネス英語・しごとの基礎英語

■9-1■

This sales promotion will be
our best shot.

日本語訳:
この販売促進は
私たちの決め手となるでしょう。

私が最初に勤めた外資系の広告代理店には、「sales promotion」の専門部署があり、SD(Sales Development)局と呼ばれていた。
マーケティングには、4つの需要なPがあるが、4つ目のPが「Promotion」である。
因みに、他の3つは「Product」、「Price」、「Place」である。
さて「best shot」は、ゴルフや写真に関して使われるが、射撃にも使われる。マーケティングにおいては、顧客のことを「target」と考えるので、この表現は奥が深い。


■9-2■

That tragic case may be
the tip of the iceberg.

日本語訳:
その悲劇的な事件は
氷山の一角です。

「氷山の一角」という表現は、やはり英語表現の翻訳だったようである。
言うまでもなく、巨大な氷が海中に浮かんでいるものが氷山であるが、海水との比重が近いので、海面の上部の体積は小さい。
さて、「tip」という言葉は、基本的には「先端」の意味であり、ここでは「一角」と訳されているが、ビジネスの分野では、「コツ・秘訣」という意味でも使われることが多いので、使ってみたい表現である。


■9-3■

It is wonderful to kick back
in the city's cafe.

日本語訳:
その街のカフェで
一休みすることは素晴らしい。

実は、この文に先行して、フランスのパリという街は、散策に最適であるという説明がある。
しかし、「kick back」が「一休みする」という意味があることを知らなかったので、訳がわからなかった。この「kick back」は、「不正な払戻し」という意味で理解していたからである。
調べてみるとアメリカでは、「一休みする」という意味で、普通に使われるようだ。
いつか、使ってみたい表現である。


■9-4■

The consumers take
a hard line with that.

日本語訳:
消費者は
そのことに対して
厳しい見方をしている。

この文の状況は、例えば、商品の値上げを対して、消費者が不買運動を起こさんばかりの反応を示しているような場合である。
line」はあまりに身近な単語であり、政治や経営の「方針・指針」としても使われることは知られていない。
hard line」は固く訳すと、「強硬路線」ということになるが、こうしてみると、「air line」は「航空路線」とも訳されることに気づく。
ビジネス分野で使ってみたい表現である。


■9-5■

We should keep track of
what's happening in the market.

日本語訳:
市場で何が起こっているのか
私たちは追跡すべきです。

「市場」とは何か、突き詰めて考えると難しいが、ここでは、例えば家電製品、さらに冷蔵庫の市場だとする。何が起こっているかは、例えば、メーカー間のマーケットシェアの推移とか、冷凍庫部分の容量の変化などが考えられる。
track」は、元々「わだち・航跡」のことであり、最近ではCDやDVDの同心円状の記録部分も意味するようになっている。さらに転じて、何かが起こった痕跡を意味し、「keep track of」は、痕跡を継続して追うことを意味するようになった。
Let's keep track of that.」くらいで使ってみたい表現である。

■9-6■

In today's harsh economic climate,
people are insecure about their jobs.

日本語訳:
今日の厳しい経済環境においては
人々は彼らの雇用について不安です。

難しく言えば、雇用環境は経済状況の従属変数(Dependent variables)である。逆に言えば、雇用に関する指数から、経済状況が透けて見えるということである。
さて、この文から経済は天候と通じるものがあることがわかる。思い出すのは、50年前の高校の社会の授業で、「経済とは何か」を問われたことがある。その時、私は「経済と天候のようなものだ」と答えた。正鵠を射た答えであったのかも知れない。
後半の「insecure」は難易度の高い言葉であるが、「未来のことが不確実である」という意味であり、平易に訳すと「不安である」ということになる。
economic climate」ともども、使ってみたい表現である。


■9-7■

I got the lowdown
from some longtime residents.

日本語訳:
何人かの古くから住んでいる人たちから
私は裏事情を手に入れました。

ビジネスにおいて、情報収集は重要なことである。
しかし、メディアなどで公開されている情報だけでは、正しい判断のための材料にはならない。人からの、言わば生情報に価値がある。索引や抄録などを「2次情報」、原本を「1次情報」と言うが、人からの生情報は「0次情報」であり、極めて価値が高い。(この「0次情報」は1980年代に私の知人の坂本樹徳氏が提唱した考えである)
この文の「lowdown」は、スラングであるが、「ひどい実態としての裏事情」というニュアンスを一語で表現できるので、使ってみたい表現である。


■9-8■

That kind of policy is
against human dignity.

日本語訳:
その種の政策は
人間の尊厳に反しています。

dignity」は、「尊厳・尊さ」と訳されるが、哲学的で抽象的な言葉である。
この文のように、「human dignity」として登場することが多いが、これは「basic human rights」、つまり、「基本的人権」が保障されている状況の意味になる。
この文の「That kind of policy」は、19世紀的な自由権が尊重され過ぎて、20世紀的な社会権が侵害されていることを示している。
因みに、否定の接頭語を加えた「indignity」は、「侮辱」という意味になる。


■9-9■

Don't paint a rosy picture.

日本語訳:
バラ色の絵を描くな。

「バラ色の人生」などと「バラ色」はポジティブな形容詞として使われるが、日本語的発想ではない。
考えてみると、バラが日本で一般的になってのは、早くても明治維新以降ではないか。その頃のバラは、文字通りバラ色の花だったのであろうか?
花に詳しくない私は、様々な色のバラがあろうので、どれがバラ色なのか自信がない。
まあ、この文の言わんとするところは、「安易に成功することを期待するな」ということである。諺で言えば「Hope for the best, prepare for the worst.」ということである。


■9-10■

Sophisticated gadgets will
win out over competition.


日本語訳:
洗練された道具が
競争を勝ち抜くでしょう。

商品の価値は、先ずは機能の高さである。しかし、より付加価値を高めるものは、その商品が持つイメージの良さである。
gadget」とは、単純な工具から、家電商品で言えば、利蔵子やビデオデッキは含まれないが、ヘアードライヤーや電気シェイバーなども含まれる。
また、「win out」は、ただ「勝つ」のではなく、「勝ち抜く」というニュアンスになる。さらに「over competition」は、マーケットでの「競争において」という意味であり、両者を合わせて、「win out over competition」をまるごとマスターしてきたいと思う。