本書は、1991年1月から始まった、新しいコンサルティングを研究する会「ニューコンサルティング研究会」の成果をまとめたものである。まるまる2年十数回の情報交換、ミニセミナー討論会」を経て、このような形になった。
 会のメンバーには、CIや製品安全、フードビジネスなど、新しい領域のコンサルタントを中心に、市場調査の専門家、イベントプランナーが参加している。また、考え方が偏らないように何人かの企業経営にも参加していただいた。
 会を重ねていくうちに、「はじめに」で述べたように、コンサルティングの役割やその活用法に対する社会的な認識が低いことが最大の問題であるという思いが強くなっていった。そして、社会に対して何らかの働きかけを模索する中で、本書の刊行が企画されたのである。

 いざ、書き始めようとして、コンサルティングの全体像が分かりにくい状況にあることに改めて気づかされた。コンサルティングという範疇に入る領域は、本書の第5章で見たように、きわめて多岐にわたる。ひとくくりに論じることは容易ではない。その意味では本書も、各論併記の立場を採って
 書れざるを得なかった。学術的に言えば、及第点をもらえない代物であろう。しかし、今後のタタキ台として、この時点で世に問うべきだと考えて、あえて刊行させていただいたのである。
 F・Wテーラーがコンサルティング事務所を開設した、1893年からはちょうど100年が経過した。ビッグ6と呼ばれる会計事務所がコンサルティング領域に大きくシフトし始めたいま、コンサルティング新世紀がまさに幕を開けたのではないだろうか。

 コンサルティングを最も有効に活用できるのは中堅企業であると、本書は考えている。あまりにも規模の小さな企業では、コンサルティングを活用する余裕も効果もない。また、組織が硬直した大企業には、ダイナミックな変身能力や機動性を望むことはできない。コンサルティングを活かせない可能性が高い。むしろ、優れた感性を持った中堅企業んいこそ、コンサルティングを効果的に活用するチャンスがある。
 現在すでに中堅企業である企業、現在は中小企業であるが成長の可能性が高い企業は本書を参考にコンサルティングを大いに活用してもらいたい。大企業の場合、事業部制や分社化によって機動力をつけてからコンサルティングを活用するという方法も考えられる。
 さて、本書は先ほど述べたように、著者個人の能力を超えたテーマであり、研究会のメンバーのみならず、きわめて多くの方々のご協力をいただいて完成している。特に、著者が1990年まで所属させていただいていた、CIコンサルティング会社、株式会社PAOSでの経験がなかったら、本書は全く背骨のないものになっていたであろう。本書を書き終えて、中西元男代表とPAOSに学んだことが大きなものであったかという思いを改めてかみしめている。

 日本経営士会、公認会計士協会、日本生産性本部、日本能率協会、ジェムコ日本経営の各団体には有意義な資料をいただいた。また、社団法人全日本能率連盟の秋葉孝彦氏には資料提供ばかりでなく、貴重な時間を割いていろいろ教えていただいた。お礼を申し上げたい。
 樹徳総合研究所の坂本樹徳氏、PL研究所所長の五木けん健氏には日頃お付合いさせていただいているなかで、多くのことを教えていただいた。
 最後に、本書の刊行をお引き受けいただいた、HBJ出版局の皆川純一朗社長と佐藤和男氏にお礼を申し上げる。

1993年1月

高橋伸冶

 目次をクリックして続きをお読みください。

▲

目  次

第7章