この章ではコンサルティングの一般的な手順と内容について説明する。
コンサルティングの中には不特定で、しかも複数の企業の方々からの質問に答えるといった相談室的なものもある。この場合、手順と呼べるものはない。しかし、基本的には特定のクライアントの個別のニーズに答えるものが本来のコンサルティングである。この場合は正しいコンサルティングでは事実を確かめることなしに判断するといった無責任な態度はとらない。合理的な手順が存在するのである。
時間的順序では、第3章で触れるコンサルタントの見つけ方などが先になるが、コンサルティングの手順と内容の概略を理解してからのほうが分かりやすいと考え、ここではコンサルタントの選定が済んだ後の手順から始めたい。
さて、企業は解決すべく多くの問題をかかえている。コンサルティングの役割とは、これらの問題解決を支援することである。そのためにまずクライアントとコンサルタントは共同して、現状の把握と目標の明確化を行ない、「問題」を定義する。次に解決手法を策定し、実施に移す。この一連の問題解決の流れの中で、コンサルタントがどの程度関与するかはケースバイケースである。全面的に関与し、主導権を取る場合もあれば、ごく一部の局面において相談を受けるといった場合もある。
どのような方法がよいかは一概には言えないが、あまりに局部的な専門家の導入はうまくいかないことが多い。それは全体との整合性が十分取れない可能性が高いからである。応急措置としては仕方がないが、総体的考慮が欠けたツギハギの対応を続けていると後から取り返しのつかないことになるということを忘れてはならない。
この章では、第1章で述べたナビゲータ的立場で問題解決の一連の過程に関与するコンサルティングを想定している。
1 手順の考え方
基本的な手順
実はコンサルティングにもいろいろな領域があり、手順もそれぞれ異なるのは当然である。しかし、多少抽象的な記述にすれば次のような手順はすべてのコンサルティングに当てはまる。
- 予備調査
- 予備調査報告
- 本調査
- 本調査報告
- 改善/推薦案の開発
- 改善/推薦案の提案
- 実施時の指導
- 事後評価
なお、以上の手順の用語は必ずしも絶対のものではない。本書が説明する内容と同じであれば名称にこだわらない。また、いくつかのステップを簡略化したり、省略したりしたものも存在するわけで、この手順を踏まないものはコンサルティングではないというつもりもない。フルに行なうとこのようになるということである。
また、この手順はコンサルタント側から見たものであり、報告や提案を受けてクライアントが取るべき対応が含まれていない。この部分に関しては第3章で説明したい。
参考のため代表的なコンサルティング団体の手順を見てみよう。
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目 次
- はじめに 経営資源としての「人材」活用のために・・・・
- プロローグ コンサルティングを導入するとき
- 第1章 なぜコンサルティングが必要なのか
- 第2章 コンサルティングの手順と内容
- 第3章 コンサルタントの選定と活用のポイント
- 第4章 コンサルティングの料金体系はどうなっているか
- 第5章 コンサルティングにはどのような領域があるか
- 第6章 コンサルティングに必要な知識と能力
- 第7章 コンサルティング、今後の課題と展望
- おわりに