2 主要コンサルティング会社の領域分類

株式会社日本能率協会コンサルティング

 社団法人日本能率協会は1942年に創立された日本で最初の、今日でも最大級のマネジメントコンサルティングファームである。通称JMAと呼ばれ、事業の多角化に対応して分社化を進め、日本能率協会コンサルティングをはじめ、日本能率協会総合研究所、ジェイエムエーシステムズ、日本能率協会マネジメントセンターなどでJMAグループを形成している。
 日本能率協会コンサルティングは1980年に株式会社として分離独立し、50年を超える蓄積を生かした総合コンサルティングを行なっている。
 日本能率協会コンサルティングでは、次のようにコンサルティング領域を大きく八つに分けている。

日本能率協会コンサルティングのコンサルティング領域とテーマ

トップ・マネジメント、本社機構、戦略経営

  • □ 経営計画、利益計画、資金計画立案 □ 事業診断
  • □ 経営戦略、事業戦略立案・実施 □ 新製品・新事業の探索と計画
  • □ 買収・合併計画立案 □ 本社機構改革、全社組織改革
  • □ 戦略会計情報システム設計 □ 予算制度立案(ゼロ・ベース計画)
  • □ 人事・給与制度改善 □ 関連経営革新 □ SIS(戦略情報システム)
  • □ 企業ビジョン策定 □ 戦略実践研修 □ サービス/CS経営
  • □ 上場計画推進

マーケティング、セールス、事業開発

  • □ 新事業診断 □ サービス事業開発 □ 顧客満足度・市場調査
  • □ 新商品企画 □ 新製品マーケティング戦略立案・実施
  • □ 現製品拡販戦略立案・実施 □ エリア戦略立案・実施
  • □ 営業競争力強化(SPECS) □ 販売組織改革
  • □ 販売チャネル評価・流通再編成 □ 特約店政策・管理改革(BECS)
  • □ マーケティング研修 □ 事業開発人材育成
  • □ セールス・マネジャー教育(実践化研修・MAPS)
  • □ セールスマン教育(実践化研修)

研究開発、技術管理、設計管理

  • □ 研究開発管理(プロジェクト管理)改善 □ 新製品・新事業探索
  • □ 技術・特許戦略立案 □ 技術情報管理システム構築 □ 開発期間短縮
  • □ 設計管理(図面、日程、工数、標準化)改善 □ 編集設計
  • □ CAD(Computer-Aided Design)化
  • □ VRP(Variety Reduction Program:部品半減化による製品コストダウン)
  • □ プラント・エンジニアリング □ KI診断(技術開発部門の風土診断)
  • □ 商品力強化 □ 生産技術革新 □ 技術開発人材育成

生産、生産技術、CIM

  • □ 混流生産ライン効率化 □ 受注生産管理システム設計
  • □ 生産管理ソフトウェアの最適活用(EDPS開発コストダウン、情報の一元化)
  • □ 自動ラインと運用システムの設計
  • □ 生産設備改善・設計 □ 品質向上 □ 品質コスト削減
  • □ 生産期間短縮 □ 小集団活動の活性化 □ 労働生産性の向上
  • □ IE教育 □ 設備極限有効活用 □ TPM □ 工場原価管理
  • □ 新工場レイアウト □ 省エネルギー □ マテハン改善 □ 生産間接削減
  • □ 工場組織改革 □ 生産技術機能の充実化 □ 資材・購買・外注管理改善
  • □ 生産技術革新 □ 生産戦略策定計画 □ CIM
  • □ CAM、生産情報管理 □ FA、物流自動化 □ TPマネジメント

オフィス・マネジメント

  • □ 管理間接業務効率化(MIC) □ 業務革新 □ 業務革新 □ 事務改善
  • □ 事務定員設定 □ オフィス・レイアウト立案
  • □ ファイリング・システム設計 □ 会議効率化(BCIP)
  • □ OA化 □ 女子活性化 □ EDPシステム水準診断・評価
  • □ EDPS長期計画立案 □ EDP部門管理改善
  • □ システム戦略・SIS □ マネジメント教育

物的流通、ジスティクス

  • □ ロジスティクス戦略開発 □ 物流診断 □ 在庫適正化、スペース効率化
  • □ 包装、保管、運搬、輸送手段の効率化
  • □ 物流労働生産性の向上 □ 物流作業管理システム設計・改善
  • □ 商品物流計画立案、デポ立地設定・評価 デポ管理システム設計
  • □ EDP情報システム設計 □ 物流組織開発
  • □ 総合物流コスト管理システム □ 物流自動化・機械化システム設計

サービス産業、官公庁、公共機関

  • □ 流通業経営改善・・店舗計画・競争力強化(SSU)、情報システム設計、
  •   商品供給・管理システム設計(MMS)
  •   店舗業務管理システム設計(SOM)、店舗活性化(SAP)
  • □ 金融機関システム改善・・情報システム設計、事務改善、定員設定、
  •   営業店レイアウト、営業店ピーク対策
  • □ レジャー事業計画・経営改善 □ ホテル、レストラン事業計画・経営改善
  • □ 遊休土地利用計画立案 □ 地域開発計画立案 □ 官公庁委託調査
  • □ 官公庁、自治体、公共機関システム改善
  • □ 公共事業体経営診断・再建計画立案 □ 公共物資物流計画立案
  • □ 教育機関経営改善・システム設計 □ 医療機関経営改善・システム設計
  • □ サービス品質 □ CS経営 □ 顧客満足度調査 □ 農業経営革新

海外事業、外国企業

  • □ 海外進出戦略の策定 □ 海外マーケティング調査
  • □ 海外投資フィージビリティ・スタディ
  • □ 海外現地法人設立にともなう立地調査、運営体制・管理システムの立案
  • □ 合併企業、海外企業買収、現地ディストリビューター選定のための候補会社の
     探索・評価
  • □ 海外における製品・技術動向調査 □ 在外日本企業経営改善
  • □ 外国企業経営改善 □ 国際協力プロジェクト援助
  • □ 海外工場の生産性向上
  • (株)日本能率協会コンサルティング「事業案内」より抜粋

財団法人日本生産性本部

 日本生産性本部は、1955年(昭和30年)に労・使・中立の三者構成で発足した。生産性という考え方は、生産の効率性に加えて、人間主体性の尊重と福祉の実現という経済的・社会的概念へと大きくふくらみ、生産性運動として展開されていった。
 日本生産性本部は労使関係の調整を図るとともに、生産性向上のため、新技術の紹介、技術教育、マネジメント教育などの事業を一貫して行なってきた。その中から生まれたのが、先ほど触れた「経営コンサルタント」養成講座である。日本能率協会に比較して、本部自体に所属するコンサルタントは少ないが、養成講座の実習に関連した診断業務には大きな実績がある。
 日本生産性本部、コンサルティング部のコンサルティング領域は、次のようになっている。

日本生産性本部のコンサルティング領域とテーマ

経営戦略・経営組織 (差別化戦略、組織の活性化)

  • □ 中長期経営計画策定 □ 組織開発・組織再編成 □ 海外進出
  • □ 組織風土調査 ……

人事・労務 (職務開発・能力開発)

  • □ 職能資格制度の導入 □ 意識調査 □ モラールアップ □ 高齢化対策
  • ……

マーケティング &nbmsp;(商・製品市場の開発)

  • □ 新商品・製品の企画 □ 新商品・製品の市場導入
  • □ マーケティング・リサーチ □ 営業戦略設定  □ 業態開発 □ 店舗活性化
  • ……

生産・物流 (生産性向上、トータルコストダウン)

  • □ 現場のコストダウン □ 生産管理システムの開発 □ 物流システムの開発
  • □ FA化 ……

財務 (管理会計をベースにした戦略型財務)

  • □ 予算管理制度導入 □ 部門別独立採算制度導入 □ 先行投資の可能性調査
  • □ 上場及び上場基準達成のプロセス構築 □ M&A ……

情報システム・OA (情報システムの高度化・OA化)

  • □ 企業内情報ネットワーク □ 情報システムの開発 □ 業務革新・OA
  • ……

TQC (品質向上と組織活性化)

  • □ 小集団活動 □ 方針策定 □ QCサークルの指導 ……

その他

  • □ CI(MI、VI、BI) □ 目標管理 □ 管理者教育 ……
  • (財)日本生産性本部コンサルティング部「経営コンサルティングのすすめ」より抜粋

株式会社ジェムコ日本経営

 ジェムコ日本経営は1968年に日本経営合理化センターとして設立され、1978年に現在の社名に変更している。ジェムコは「JAPAN EXCEL-MANAGEMENT CONSULTING CO.,LTD.」のアクロニム(頭文字語)である。
 日本能率協会や日本生産性本部が行政的なバックアップを受けて成立したのに対し、ジェムコ日本経営は民間の企業として、500名を超えるコンサルタントを擁する最大級のコンサルティングファームとなっている。
 ジェムコ日本経営のコンサルティング領域の分類を表に示す。

ジェムコ日本経営のコンサルティング領域とテーマ

経営戦略

  • □ 新規事業の開発・展開 □ 戦略経営のための収益源の開発
  • □ 経営戦略の樹立・短期・中期経営計画 □ 事業構造の改革
  • □ 事業継承のための経営革新 □ 企業グループ体質強化
  • □ 関係会社経営再建(系列・協力・取引先・融資先企業)
  • □ 経営顧問コンサルティング □ 経営相談・経営診断
  • □ 事業転換・海外進出相談ほか

経営管理

  • □ 経営・管理の活性化(人・組織の活性化) □ 管理体制の確立
  • □ 経営管理活動の効率化 □ 財務体質の強化 □ 人事評価制度の確立ほか

企業文化

  • □ 企業文化の創造 □ 企業文化の再構築
  • □ SCI(戦略的コーポレート・アイデンティティ)
  • □ 新しい企業文化・風土形成のための経営健康観測ほか

事業開発・多角化

  • □ 新規事業企画の立案 □ 事業管理システムの確立
  • □ 大型・複合プロジェクト・レジャーランド事業化計画
  • □ リゾート開発事業化計画 □ インテリジェントビル計画
  • □ 商業地域活性化 □ 保有地(遊休地)有効活用  □ 地場産業の振興
  • □ 各種イベント企画 □ 研修ツアーほか

情報革新

  • □ 戦略的情報システム(SIS) □ 経営情報管理システムの構築
  • □ マネジメントシステムの設計 □ 営業戦略情報システムの構築ほか

システム革新

  • □ 業務システムの構築 □ 顧客情報管理システムの構築
  • □ 販売・流通システムの設計 □ 販売管理システムの設計
  • □ 生産管理システムの構築 □ 受発注管理システム
  • □ 工程管理しくみづくり □ 生産活動支援システムほか

研究・開発・技術・設計

  • □ 商品企画コンサルティング □ 新製品開発コンサルティング
  • □ 開発製品のコストミニマム化
  • □ 製品群の横断的、機能的トータルコストミニマム化
  • □ 製品開発のマネジメントシステムの確立
  • □ 研究開発部門におけるマーケティング企画
  • □ 研究開発部門の効率化、活性化 □ 開発・設計技術の標準化
  • □ 用途開発コンサルティングほか

マーケティング企画

  • □ マーケティングマネジメントの強化育成
  • □ 市場開発のための販売戦略企画の立案 □ 市場管理システムの確立
  • □ 商品力管理の確立 □ 市場活性化(PR、広告等)ほか

流通革新

  • □ 流通構造活性化 □ 市場企画強化 □ 販売戦略・政策の樹立
  • □ 販売体制の強化、活性化 □ 営業対策活性化 □ 販売部門の活性化
  • □ 各種営業店の活性化 □ 多店舗展開における店舗管理システムの確立
  • □ 販売チャネルの強化・再構築 □ 販売代理店(間接販売)活性化
  • □ 販売方針の実行、定着化
  • □ 販売管理の強化 □ 海外における販売拠点管理ほか

OA化・FA化

  • □ OA化推進のための業務改善 □ 自動化計画の推進
  • □ 工程系列の計画コンサルティング □ 製造ラインFA化コンサルティング
  • □ CAD/CAMのための各種標準化ほか

コスト・品質競争力

  • □ 原価企画のしくみ作り □ 設計・製造・購買総コスト改善
  • □ 設計改善による製品競争力の強化 □ 生産性向上コンサルティング
  • □ 全社総資源改善 □ 外注・購入コスト改善
  • □ 調達品の品質改善及び品質保証体制の確立
  • □ 工事における生産性向上運動 □ 建設工事費の総合改善
  • □ 協力工場の生産性向上 □ 標準モデル開発による技術水準の開発ほか

国際化・海外コンサルティング

  • (国際化)□ 海外進出相談・各種調査 □ 工場建設・生産拠点開発計画
  • □ 外国企業の日本進出計画ほか
  • (海外コンサルティング)□ 経営相談・経営診断 □ 事業継承のための経営革新
  • □ 企業グループの体質強化 □ 経営・管理の活性化
  • □ 新製品開発コンサルティング
  • □ 設計改善による製品のコスト競争力開発 □ 工場生産性向上
  • □ 営業力・販売力の強化 □ 総合物流の改善
  • □ OA化・CAD/CAM導入推進 □ 収益改善  □ 講演・教育ほか

全社的運動

  • □ 業務付加価値構造の開発 □ 業務生産性の向上
  • □ マネジメント構造の確立
  • □ コミュニケーションシステムの効率化
  • □ 小集団活動のマンネリ化打破ほか

物流

  • □ 競争力のある物流のしくみ改革 □ 物流戦略・計画の策定 □ 物流管理システム
  • □ 総合物流の改善 □ 販売力強化のための拠点計画 □ 運輸業務と物流費改善
  • □ 場内物流の改善 □ 物流在庫削減 □ 在庫管理システム □ 仕入れ計画ほか

教育・その他

  • □ 各種講演会 □ 各種職位別教育(役員・幹部研修、管理者教育、監督者教育、
     一般社員教育、女子社員教育、新人教育)
  • □ 各種専門教育(ジェムコ式VE・バリューデザイン教育、コストエンジニア養成コー
     ス、セールスマン教育、原価企画教育、バイヤー教育、渉外担当者教育、IE教
     育、QC教育ほか)
  • □ その他企業ニーズに応じた実践セミナー □ 各種通信教育
  • □ 公開大学講座(管理者大学講座、販売大学講座、購買大学講座)
  • (株)ジェムコ日本経営「会社案内」より抜粋

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目  次

第5章
コンサルティングにはどのような領域があるか